エッセイのようなもの?

著者:竜崎だいち

 見上げた空は、真っ青じゃなかった。
中学生の頃、ぼんやりとそんなことを考えていた。
空には真っ黒い線が何本も何本も、それこそ数え切れないほど張られている。
授業中、学校の窓から見るそれが、私にはクモの巣のように見えて仕方がなかった。
クモの巣は延々と張り巡らされ、まるで、真っ黒いペンでなぐり書かれたように見える。
人の手では消せないインクによって。
小さい頃、壁に落書きをして怒られたのを、みんなすっかり忘れてしまったかのように。
そんなことを、黒板の内容を書き写す合間に、ノートに書きためていた。
 今では気恥ずかしくて言えないようなそんな言葉を書く、そんな前科があったからなのか、今では無職のぼんやり演劇人になっている。
 定職があるわけではない。特に過密なスケジュールがあるわけでもない。
 年もだいぶくってきた。そろそろ何とかしないとなあと、やはりあの時と同じく、ぼんやりと空なんか眺めていたりする。
 私は演劇をするとき、地球の名前を無断で借りたりしている。
 だから地球が汚れてしまうのは嫌だなあなんて、人知れず思っている。だけどそれを神々しくかかげるのではなく、地味にポイ捨てなんかをしないように心がけて、そんなふうに優しくしてみる。
だけど空を、見上げる時だけは、ちょっと悲しくなる。
そして中学の頃に書いたノートの、この言葉が思い浮かぶ。
『ボクは片目をつぶって空を見上げた。
 見上げた空は、真っ青じゃなかった。』

 それってけっこう悲しいなと、ふっと思った。